リーダーシップ

リーダー論!仮説思考を身につけることで仕事の質とスピードか高まる理由と具体的な方法

1. はじめに

仕事においては、情報やデータが多ければ多いほど良い意思決定ができると信じているビジネスパーソンが多いのではないでしょうか。そのため、できるだけ多くの情報やデータを集め、それらを分析してから課題を抽出し、解決策を示そうとします。

でも、その結果として、実際に起こることは何でしょうか。残念ながら、それは時間切れです。膨大な情報やデータを網羅的に徹底的に調べてから答えを出すという仕事のやり方には限界があります。とても時間も資源も足りません。それではどうすればよいのでしょうか。

仮説思考を身につければ良いのです。でも、仮説思考とはどのようなものであり、なぜそれが重要であり、どのように行動すればよいのでしょうか。

本記事は、内田和成氏の書籍「仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法(東洋経済新報社)」を参考にしています。内田氏は、ボストンコンサルティンググループにおいて、経営コンサルタントとして活躍され、また、早稲田大学大学院経営管理研究所(ビジネススクール)の教授も務められておりました。その経営コンサルタントとしての仕事のスピードや質を上げるための仮説思考について非常にわかりやすく解説しております。

本記事では、その内容を踏まえつつ、筆者の独自の見解や経験も加えながら、仮説思考を身につけることで、仕事の質とスピードが高まる理由とそのための具体的な方法について解説していきます。

本記事は、ビジネスの経験が少なくて仕事の進め方が遅い、判断ができない、そう思っている方や、ビジネスの経験はそれなりに積んでいるのにいつまでも先を見通すことができずに、思い切った意思決定ができなくてリーダーとして力不足と悩んでいる方、このような方々に向けて仮説思考について解説していきます。

2. 仮説思考とは?

仮説とは、情報収集の途中や分析作業の前に持つ仮の答えのことです。そして仮説思考とは、情報が少ない段階から、常に問題の全体像や結論を考える思考スタイルあるいは習慣ともいうべきものであります。

仮説思考を実践すると、不思議なことに仕事がスムーズに進むようになり、仕事の正確性も増します。情報を闇雲に集めると、仕事を遅くすることはあっても、正確性が増すことは少ないということに気づきます。情報の洪水に埋もれてしまっていたということになるのです。

(1)仮説思考を身につめるためには経験が必要では?

仮説思考を身につめるためには経験が必要でしょうか?答えはNoです。

仮説思考は、経験を積まないとできるようにならないと思っている方もいるかと思います。でも、そのように思っているうちは進歩することができません。仮説思考は実践していく中で身についていくものです。

最初もうちは、仮説が的外れになることも多いかもしれません。でも、人は失敗から学べるのです。なぜ失敗したのか、うまくいかなかったのかを考えて、次はあそこを変えてみよう、今度は別のやり方を取り入れてみようと試行錯誤をしながら進歩していくのです。失敗を積み重ねながら、仮説思考は進化していくのです。

(2)情報やデータが多いと正しい意志決定ができるのか?

情報やデータが多ければ、正しい意思決定ができるのでしょうか?答えはNoです。

多くのビジネスパーソンは、情報は多ければ多いほど良い意思決定ができる、間違いのない意思決定ができると信じています。そのため、できるだけ多くの情報を集めてから、課題を抽出します。次に、課題の解決方法を探し出すために、また必要な情報を集めます。そして、この作業を作業を繰り返してしまうのです。

その結果、結局、自分自身の処理能力では対応できないような情報量になってしまい、いずれ時間切れとなります。そして、最後には質の低い成果ができる可能性も出てくるのです。

実際に情報量が多いと何が起こるのかというと、情報収集をしているうちにどんどん時間は過ぎていきます。その結果、解決策を出して意思決定を行うという一番重要なときには、時間切れ間際でやっつけ仕事のようになってしまうのです。

でも、早い段階で仮説を持つことを繰り返していくと物事がうまく進むようになります。実は仕事ができる人は、人よりも答えを出すのが早いのです。まだ十分な材料が集まっていない段階や分析が進んでいない段階でも、自分なりの答えを持っています。

こうした仮の答えを仮説と呼びます。その仮説を持つ段階が早ければ早いほど、仕事はスムーズに進みます。仕事の速い人は、限られた情報を基に、人より早く正確に問題点を発見し、解決策に向けて繋げることのできる思考法を身に着けているのです。

(3)仕事が遅い人の特徴

一方で、仕事が遅い人の特徴を見てみます。そのような人は、とにかくたくさんの情報を集めたがります。多くの情報がないと意思決定ができないという人たちは、仕事を早く進めることができないのです。

仮説というと、難しいことに感じるかもしれませんが、実は私達の普段の生活でも、仮説を使って暮らしていることが多いのです。

例えば、車で高速道路を移動中に渋滞に巻き込まれたらどうしますか?例えば事故渋滞だから、急いで下道に降りて移動した方が早いという仮説を立てて、下道で移動するかもしれません。他方、ここで焦って下道で行っても結局高速道路から降りない方がが結局は早いという仮説を立てて高速道路から降りずにそのまま移動するかもしれません。そして、その結果、比較することは難しいですが、どうなったかという経験が次の機会に生かされていくのです。これが仮説思考とその検証・カイゼンというプロセスになります。

(4)仮説思考のメリット

仮説を使う思考方法は、ビジネスパーソンにとって最も大切な能力の一つです。仮説思考を身につけることによって、迅速かつ正確に課題の本質を解明し、解決策を導き出すことができるようになります。

社会が大きく変化する中では、ノー・アクションであったり、意志決定を遅らせるというのは大きなリスクになり、致命傷になりかねません。いつまでも選択肢を広げる情報収集を続けて、意思決定のタイミングを遅らせるわけにはいきません。網羅的に情報収集するのではなくて限られた情報をもとに仮説思考によって適切な意思決定をする必要があるのです。

3. 仮説思考が重要な理由

(1)仮説思考は早く高い質で成果を出すことができる

仮説思考が必要な理由について説明します。まず仮説思考を行うことで、問題解決のスピードは速くなります。仕事をしていると様々な課題があるのですが、それに対してあらゆる原因その原因に応じた解決方法、これらを網羅的に調査するというのは実際には難しいことがあります。

しかし、一般的な会社の中では、特にこのデータがないと解決策は見いだせない。データが必要だというようなことが多くの場面で出てきて、そのデータを収集することに時間を取られてしまうということになります。

実際には解決策を出すまでの時間も資源も限られています。そのような中で、網羅的なやり方をすると、結果としては時間切れになってしまいます。そして、その時間切れになった中で、深堀りできていない答えを出していくということがよくあります。でも、これが今さまざまな場所で起きている現実ではないのでしょうか?

問題を解決するためには実験も時間も資源も限られているので、あらかじめやはり答えを絞り込んで仮説を立てることが非常に重要になります。

仕事の進め方で大事なことは、データから積み上げるのではなくて、あらかじめ答えを持って、そこから発想を展開していくことが重要になります。課題を分析して答えを出すではなくて、まずは答えを出して分析して証明するということなのです。

具体的には、仮説を立てるということをするとそこからやるべきことというのが明確になります。そして、論点を深掘りをしていくのです。大事なことは、枝葉についていろいろなことを考えるのではなくて、1本の太い幹について明確なシナリオを作ることが重要になるのです。
そしてこの幹に対して必要な検討を進めていきます。そのうち、不足するものも出てくるのですが、それは後で追加すればよいのです。そのため、枝葉にこだわるのではなくて、まずは幹が何かという仮説を立てるのです。少ない情報の中でも、ある仮説を立ててからそれを証明するために各種の検討を進めていくのです。これが解決策を導き出し、意思決定をしていく上で非常に重要になるのです。

そして、仮説思考の経験を積んでくると、実はある問題を見ただけで答えが見えてくることがよくあります。実は見ただけで答えがわかってしまうということになるのです。

もちろん、その答えは100%合っているわけではないのですが、過去の経験に基づいて何をすると、どういうことになるのか、因果関係を経験から把握しているため、答えとして考えうることを最初の段階で示すことができるのです。

ある程度の方向性を最初の段階で示すことができるのです。このような大きなシナリオやゴール最初の段階で持てるため、ゴールに向かって解決策を示していくためのプロセスを具体的に考えていくことができるのです。そして、短い時間で解決策の実践に向けた意思決定ができるようになるのです。

(2)仮説思考とパレートの法則の関係

仮説思考はパレートの法則と関係があると考えられます。結果の80%は、20%の主要な要因で決まるということになります。つまり、仮説思考というのは、最初に考えられる結果の要因のうち、80%を捨てて主要な20%に絞り込んでいるということになります。

その20%の要因に対して、結果を出すための分析などを論理立てて行っていくということになり。結果の80%が20%の要因で決まるということに繋がっていくのです。

幹の部分ではなくて、枝葉の部分に取り組むということは、主要な要因となる20%以外の残り80%に対して労力を割くということです。そして、活用できるものは、全体の結果に対する20%程度の寄与しかないのです。仮説思考というのは、その中での最適な課題解決プロセスになるのです。

(3)仮説思考と網羅思考の違い

仕事やプロジェクトを進めていく上で大切なことは、迅速に意思決定を行い、成果をあげることです。会社役員や組織長、チームのリーダーでもメンバーでも、必ず意思決定をしなければならなりません。でも、そのような人たちに対して、意思決定で必要なことは何かと聞くと、多くの場合には情報やデータという答えが返ってきます。

でも、実際には間違いです。ある程度の情報は必要ですが、多ければ多いほど良い意思決定ができる訳ではないのです。実際に大事な情報というのは、意思決定をして実践していくためのあらゆる解決策(選択肢)のうち、選択肢を狭めてくれる情報だけが役立つのです。それ以外の情報は、捨てられることになります。企業においても組織やチームの意思決定においても同じです。

世の中には、その情報を網羅的に扱わないと気が済まないタイプの人も多いです。もしそのような方が上司である場合には、その部下というのは、捨て案に対して多大な情報収集をしなければならず疲弊してしまいます。チームの生産性は高まりません。

実際に仕事をしていると、考えられるあらゆる側面を把握した上で、そこからデータの収集分析を行って、その結果を基に結論を組み立てるというような人は実際には多いものです。

このような思考を網羅思考と呼びます。網羅思考では、最後にどのような結論になるのか、解決策に至る全体像は見えることはないのです。

これが仮説思考と網羅思考の大きな違いになります。実際に網羅思考が行っていることは、まず情報収集して、その限られているけれども網羅的に集めた情報の中から一つ一つの結論を導き出して、そのストーリーを増やしていくのです。

これを繰り返して蓄積していくことで、ストーリーの全体像がやっと見えてきて、問題の解決策が導き出されるということになります。

これは積み上げ型の思考になるので、数多くの分析を行わなくてはならないため、時間が無限にかかるというような欠点があります。最終的には、工期に対して間に合わないし、追加の情報が必要となったときには時間が足りないので、必要な情報を掘り下げて分析するという時間や資源を確保することができないのです。このような網羅思考の欠点を解決できるのが仮説思考になります。

(4)仮説思考で重要なことは大きなストーリーを描くこと

仮説思考において重要なことは、大きなストーリーを描くことです。実際にどのようにするのでしょうか?

一般的には、どのような情報やデータを収集するのかを考えて、実際に情報やデータを集めてから分析を行い、答えを導いていくということになります。

でも、仮説思考では、実際に情報やデータなどを集める前に、何のデータを集めてどういう分析をして、課題はどういうものであるか見立てをして解決策まで示します。これを、情報やデータが限られた段階で仮説を立てるのです。

仮に、学術論文であれば、情報やデータを集めて分析をする前に論文を書くようなイメージです。その後に、その仮説を導くために必要と考えられる情報やデータの収集を行うのです。

このように、ある仮説を立てて進めていった方が、圧倒的に効率的であり、課題に対して掘り下げた分析ができるので、実際には具体性や実効性のある有効な結論が得られるということになるのです。このわずかな情報から全体像を考えるという能力、これこそが仮説思考であり、仕事の生産性を上げるためには非常に重要なのです。

(5)仮説が間違っていたら非効率なのか?

懸念されることとしては、もしその仮説が間違っていたらどうなるのでしょうか。実際には仕事を進めていくとよくあります。

仮説思考に慣れていないと、自信を持って仮説がを立てたのにそれが全く逆だったということも起こりえます。それは、短期的に見れば時間のかかる作業になることもあるかもしれません。しかし、その経験を積んでいくと、その逆の答えになるような可能性は明らかに小さくなり、答えに近いところに対して仮説を立てることができるようになっています。

これは、仮説を立てて検証して、間違っていては少しずつ訂正していくというよう作業になります。これは、実際にはやり直しになっても、答えに向かって進む中で不要な要因(パレートの法則でいう残り8割の要因)の情報が削ぎ落とされていく過程になります。そのため、仮に仮説が間違っていたとしても、答えに到達するスピードは、網羅思考よりも早まるし、将来的な仮説の立て方の経験値も能力も上がっていくということになります。

網羅思考で問題を解決しようとすると、相手や顧客が必要とする課題への解決策に具体性が無くなってしまいます。それよりも、ある絞り込んだ課題に集中して、課題や解決策を深掘りした方が、相手や顧客の満足度は高まるのです。

4. 仮説思考で問題を解決するための具体的な方法

仮説思考を身につけて問題を解決していくための具体的な方法について解説していきます。

(1)先に仮の成果を書く

例えば、仕事で何かの報告書を期限までに作成するというものがあったとします。多くの人はどのような資料を作っていくのかを見出すために、資料集めから始めることになります。これが先ほどの話でいうところの情報やデータになります。

仮説思考では、そうではありません。先に報告書の目次を作り、各項目の骨子を限られた情報やデータの中から先に作ってしまうのです。おそらくこのような結論になるだろうという見立てを持って、40%の達成率でよいので、先に報告書を作ってしまうのです。これが非常に大事になります。

まず大事なことは、0を1にするという作業になるのです。情報やデータの収集をしても、成果に対する進捗はあまり進んだことにはなりません。でも、報告書を先に作ってしまうと、まずファイルを立ち上げて、骨子を作ることになるので、その中で最小限やらなければならないことが文書化されるのです。

そして、結論も仮で書きます。これにより、仮の結論を導くための必要な情報が絞られることになるのです。仮の結論を先に作ってしまうと、この先に行う作業の効率を大きく高めていくとことができるのです。

この時点では、他の多くの人は、網羅思考で情報収集を行っているのです。ファイルも作成していないし、目次も骨子も仮の結論もありません。

(2)頭の中でアイデアを熟成させる

一度、仮の結論を作ってしまえば、その後は、作業をしていないときでも頭の中で考えることができます。その中で、あの情報が必要ではないか、この情報はいらないのではないか、結論を導くにはこのデータが必要などと、手を動かさない間にも、そのアイディアを熟成することができるのです。ここも非常に重要な点になります。

人の創造性や生産性は、期限を先送りにすると、最後は時間切れになって、良い成果を作ることはできません。逆に前倒ししすぎても、質の低い成果になってしいます。大切なことは、これらのちょうど間にある時点が、生産性や創造性を最適化できるポイントになります。

これは、アダム・グラント氏がTEDの講演の中で前倒し・先延ばしの人の特性(Pre-crastinators & Procrastinator)と生産性(Creativity)の関係を示しており、独創性(Originals)は前倒しと先延ばしの中間地点にあります。このことを具体的に示す一つの根拠になるかと思います。

早い段階で仮の成果を作成してから、そのアイデアを熟成させるための一定の期間取ることが大切です。そして、この仮の成果が、先に成果の幹となる部分を作るということになるのです。

(3)仮説をチームメンバーや上司・顧客と共有する

仕事を行う上では、プロジェクトチームであったり、タスクフォースであったり、一定のチームの中で作り上げていくということが出てきます。

そのような場合には、リーダーが考えていることを、メンバーや上司・顧客が理解する必要があります。また、メンバーが効率的・効果的に生産性を高めて仕事をしていく上でも、この仮説思考というものは非常に役立ちます。

既に導き出したいアウトプットが明確になっていて、そのアウトプットを導き出すための必要なデータであったり、分析方法が明確になります。それをメンバーなどと共有することができるのです。

リーダーの立場からすると自身が何を考えて何をアウトプットとしているのかを明確に伝えることができます。アプトプットを作り上げていく上で何が不足しているのか、そのために必要となる情報や分析方法もメンバーに伝えることができるのです。

プロジェクトを進めていて、網羅思考になってしまうと進捗を把握することができません。全体100%に対してどれぐらい進んでいるのか、そして残りがどれぐらいになるのかということが分からないと、多くのメンバーは工程が組めないため、工程管理もできず、メンバー自身で時間をコントロールすることもできなくなります。やる気やモチベーションを高めることも難しくなります。もし、ゴールが決まっていれば、あとはメンバー自身が時間を管理して対応できるのです。

チームで生産性を高めて、プロジェクトを効率的に進めることができ、更に成果の質も高めることができるのです。その結果、顧客からの感謝の言葉をもらったり、顧客満足度が上がるのであれば、リーダーやメンバーのやる気やモチベーションも高めることができ、リーダーやメンバー自身の成長にも繋がっていくという、正のスパイラルを作っていくことが大切なのです。

(4)結果のふりかえりとカイゼンを繰り返す

成果を作り上げた後には、ふりかえりをカイゼンを行うことが非常に大切になります。

ふりかえりを行うことで、本当であれば、ここのアプローチは違う方法をとった方が良かった、答えを出す上ではもっと違うところに留意する必要があった、そういった話は必ず出てきます。

それがプロジェクトの途中であれば反映していくこともでき、プロジェクトが終わった後では、次のプロジェクトにふりかえりの結果をカイゼンしてブラッシュアップしていくのです。

このプロセスを行っていくことで、チームとしての生産性はますます高まっていくし、短い時間の中で、より質の高い成果を上げていくということができるようになるのです。

この仮説検証プロセスを繰り返していくとその効率は高まっていきます。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目、3回目よりも4回目と、必ずしも同じことをするものではなくても、あるプロジェクトで得られた知見というのは、別のプロジェクトにおいても活用できるのです。大事なことは、この仮説検証のプロセスを、さまざまな場面して行い、応用していくという意識を持って対応していくことが重要なのです。

(5)失敗は成功・成長のプロセスというマインドセットを持つ

仮説検証を行いながら対応しても、必ず失敗することはあります。よく勘違いをしてしまうのが、失敗か成功かという2者択一の捉え方をしてしまい、失敗を恐れてしまうのです。そのため、失敗をしないようにするために、チャレンジをすることをやめてしまいがちです。

このような負のスパイラルに入るような場面をよく見かけます。でも、実際に失敗と成功の関係は対になっているのではなくて、小さな失敗やカイゼンを繰り返していき、その先に成功や成長があるのです。

それは、短期的に見ればある一つの失敗は、成功と表裏一体のように見えるかもしれませんが、その失敗は次のプロジェクトでカイゼンしていくことで、経験値が上がり、その先のさまざまなプロジェクトでの成功や仕事における成長に繋がっていくのです。失敗と成功の関係、失敗と成功・成長の関係については、大きくマインドセットを変えていかなければならないということになります。

(6)身近のところで練習する・時間を確保する

仮説と検証のスキルを高めていく上で重要なことは、身近な友人や同僚、上司に対して仮説思考をどんどんトライして、練習をすることが大切です。練習台になってもらうということは、上司や同僚などの時間を取ることになりますが、仮説思考が身についていけば、仕事の効率が上がっていきます。それは、チーム全体の生産性が高まることになるので同僚や上司にとってもメリットがあり、皆さん自身の成長につながるので皆さん自身にとってもメリットもあるのです。まさにWin-Winの関係なのです。最初のうちは時間がかかるかもしれませんが、それを継続していくことが大切なのです。

5. おわりに

仮説というのは、多くの効用があります。仕事が早くなり、成果の質も上がるのです。個人としても間違いなく仕事を行うスピードは速くなり、課題を見つけて解決策を示し、意思決定に繋がげるスピードを上げることができるのです。これは網羅思考で闇雲に調べていく方法よりも明らかに効率的であって、格段の成果の品質に差が出てきます。

仕事というのは、作業だけではなくて、たくさんの意思決定をしてプロジェクトを進めていくということになります。その意思決定の質を高めていく上で、仮説思考はとても重要な役割を果たしているのです。

まず仮説を立てて、それを検証するプロセスを繰り返していくことで、精度が高まっていきます。そして、課題となるものをあらかじめ絞り込んでいるので、その課題に対して解決策を深掘りして、顧客またはまだ上司でもあり、経営層でもあり、提案していくことができるようになるのです。それは、相手(顧客や上司等)にとっては、実効性のある解決策が示されるということになるので明らかに質が高まるのです。

リーダーに重要な能力としては、先を読み、仮説を立て、少ない情報で意思決定をする判断力、決断力を身につけていくことが重要です。この仮説思考を身につけていくことで、効果的に成長していくことができるのです。そして仮説や検証というのを、チームや組織などで共有化して行うことで、チームとしての生産性を高めるということができるのです。

枝葉ではなく、幹の部分をメンバと共有することで、答えを明確に持った上で、メンバー自身で時間を管理しながら解決策を期限までに示すということができることになるのです。

仮説思考を取り入れるといっても、やはり不安になる方も多いと思います。そのような方は、小さな仕事に対して、少し仮説的に考えてみてやってみる、この意識を持って続けていくことが第一歩になります。仮説思考を小さなものから始めて、大きなところへ展開していくのです。

そして、失敗から学ぶことが大切です。間違っていてもやり直せば良いのです。もちろん最初は間違えますが、失敗と成功は対になったものではありません。失敗を積み重ねることで、成功だとか成長に繋がっていくのです。失敗したら怖い、失敗したくない、そんな思いは捨てて、成長するためのプロセスだ考えて対応していくことが重要です。

網羅的思考では枝葉の部分に時間を取られてしまうのですが、仮説思考では幹の部分を考えることができるようになります。すぐにできるものではないと思うかもしれませんが、小さなものから行動していけば、PDCAを回していくことができますので、ぜひ頑張っていきましょう。

6. おすすめ書籍

内田和成氏の書籍「仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法(東洋経済新報社)」

筆者自身もコンサルタントとして、実際には本書を読む前から実践している方法ではありました。経験を積むことで、少ない情報の中でも答えを見い出し、幹の部分を作り、答えを作っていくということを実践しています。

その中で本書に出会ったのですが、本書では既に経験に基づいて行っていたことを体系的に整理されていて、更に筆者自身の行動についても見直しを行い、多くの改善点も明らかにすることができ、非常に有益な書籍となります。

本書のターゲットは、コンサルタントである必要はなく、仕事をされている多くの方に対して汎用性があります。読んだその時からすぐに行動することができるような、即効性もあります。この仮説思考は、仕事をするあらゆる場面で活用できると考えています。

仮説思考により、仕事のスピードだけでなく、質も上げて生産性を高めていく、その中で、自分自身も成長したいと考えている方には、必読の書籍となります。ぜひ読んでみてください。

関連記事