リーダーシップ

意思決定論:重要な集団意思決定を行う時の注意点

はじめに

組織やチームが重要な意思決定を行う際、リーダーやメンバーは多くの課題に直面します。その決断は本当に正しいのか、重要な意思決定であればあるほど難しくなります。

特に、現代のように不確実性が高まり、変化のスピードが速い時代においては、単に集団で決定を下すだけではなく、そのプロセスやその後の対応も極めて重要になります。一度、違う方向に歩きだして慣性が働いてしまうと、なかなか元に戻すことが難しくなり、軌道修正が困難になり、取り返しがつかないことになるリスクがあります。

ここで示す重要な意思決定は、チームや組織、企業等が進むべき方向性を定めるような、不可逆性の高い重要な意思決定を対象としています。トライアル&エラーによる高速PDCAを回してカイゼンしていくようなスピーディーな意思決定とは対象が異なるので、分けて考えることが大切です。

本記事では、重要な集団意思決定を行う際に、陥りがちな注意点を取り上げ、これらをどのように回避し、より良い意思決定を行うべきなのか、重要な事項に対する意志決定論について解説していきます。

意志決定論:重要な集団意思決定を行う時の注意点

ここでは重要な集団意思決定を行う際の6つの注意点について順番に解説していきます。

注意点➊:問題を議論する選択範囲をできるだけ狭くしようとしてしまう

チームなど集団で意志決定を行う際、一般的には、問題の論点を絞り、迅速に答えを出してPDCAを回すことが正しいと考えられます。

でも、もしそれが、今後のチームや企業を左右するような重要な意思決定を行う場合には話が少し違ってきます。

問題を議論する論点を絞り過ぎると、本当に必要だったかもしれない問題が見落とされ、見落とされたまま議論を行ってしまい、誤った意思決定をしてしまう可能性が高まります。

問題を議論する選択範囲は、PDCAを回せるものは迅速に行うことで問題ありません。

でも、今後を左右するような大きな分岐点となるものは選択肢を狭めずに時間をかけて議論していくことが大切です。問題の重要度に応じて使い分ける必要があります。

注意点➋:メンバーの過半数が賛成した意見は、例えその後に状況に変化が起きても再検討されることはほとんどなくなってしまう

チームなど集団で意思決定を行う場合、民主主義的に過半数が賛成してものごとが決まることがあります。議論をし尽くして過半数が賛成し、意思決定がなされるということは、一見よいことのように思えます。でも、忘れてはいけないことは、前提条件として、現時点の状況下における賛成過半数の意思決定であるということです。

このVUCAの時代、チームを取り巻く外部環境や内部環境は、大きく、目まぐるしく変化します。想定外の方向に変わっていくこともあります。そのような変化が生じた時に、一度決定したことを再検討することはほとんどありません。

それはナゼでしょうか?

再検討するということは、先の意思決定が失敗とみなされてしまうからです。また、意思決定をした議論をぶり返すことになるので、ひっくり返そうとする人は非難を浴びてしまうこともあるのです。そして変化に対応できなくなり、手遅れになってしまうというリスクが高まってしまうのです。

常に外部・内部環境に高いアンテナを張り、ものごとを俯瞰でき、変化に対して柔軟に対応できるマインドセットを持っておくことが重要なのです。

注意点➌:一度否定された案は、直ちに忘れ去られてしまう

見落とした長所はなかったのか?どこを修正すれば優れた案になるのか、誰一人として考えようとしなくなってしまう

チームなど集団で意思決定を行う場合、否定されてしまう提案もあります。このように否定された案は直ち忘れ去られてしまい、今後、議題に挙がってくる可能性はほとんどなくなってしまいます。

その時の否定という決断は、本当は修正すれば優れた案であった可能性もあり、外部環境や内部環境が変化すれば将来、優れた案になりうる可能性もあるのです。

このような変化が起こりうることを前提として、常にオープンなマインドで物事に取り組むことが大切なのです。

注意点➍:リーダー自身以上に知識と情報をもっているメンバーの意見は一切聞こうとしなくなってしまう

特にこのような特徴のあるリーダーは要注意です。自分以上に知識や情報を持っているメンバーがいる場合、実は、多くのリーダーはそのメンバーの意見を聞かなくなってしまいます。リーダーとメンバーの専門分野が近ければ近いほどに…です。

純粋に考えれば、リーダーにとって、知識や情報を持っているメンバーは貴重な存在のはずです。でもチームの他のメンバーは、その優秀なメンバーに話を聞きにいくようになります。リーダーの上司もリーダーを飛び越して、優秀なメンバーに話を聞きにいくようになってしまいます。

そうすると、リーダーは、自尊心が高すぎたり、意志決定における主導権を握りたくて優秀なメンバーの意見を聞かなくなるのです。

大事なことは、重要な局面で集団意思決定を行い、正しいと考えられる方向に舵を取ることなので、リーダーは、その本来の目的にフォーカスして取り組んでいくことが大切なのです。

注意点➎:自分の考えに都合のよい意見や情報には積極的な興味を示すが、逆の場合は全く無視してしまう

チームなど集団で意思決定を行う場合、リーダーは、自分の考えに都合のよい意見や賛同してくれるメンバーに対して積極的な興味を示すのは自然なことかもしれません。

しかし、自分の考えに対して、都合の悪い意見や情報を与えるメンバーに対する反応はどのようになるのでしょうか。都合の良い意見や情報と、悪い意見や情報を俯瞰して受け止めることができ、平等に扱える人は、優れたリーダーと言ってよいでしょう。

でも、現実の世界では、都合の悪い意見や情報を素直に受け止めることができるリーダーは少ないのではないのかもしれません。

特に、重要な集団意思決定を行う場合には、都合の悪い意見や情報を如何に受け止め、冷静に客観的に比較評価を行えることが、リーダーに求められる重要な役割なのです。

注意点❻:決定を下しさえすればそれで万事終了と考えてしまう

決定に基づく実施段階でしばしば起こるアクシデントへの対応方法は、誰も配慮しようとしくなってしまう

チームなど集団で意思決定を行った場合、本当に大変で重要なのは、決定したことを具体的に実施していくときであり、様々な問題が生じてきます。

でも、多くのリーダーは、決定したことで終了と考えてしまいがちです。そのため、せっかっく何度も議論して集団で意志決定を行ったのにも関わらず、頓挫してしまうということが生じてしまいます。

重要なことは、実施段階の現場で、意志決定したことを実践し、その中で生じる問題を特定し、改善を継続するようにPDCAサイクルを回すことなのです。

集団意志決定をしたら「あ~終わった!」ではなくて「これからが本番!気を引き締めよう!」という気持ちで取り組んでいくことが大切なのです。

おわりに

ここまで、重要な集団意思決定を行う時の注意点という視点から、意志決定論について解説してきました。

集団での重要な意思決定においては、多様な視点や意見を取り入れることで、より質の高い結論に到達する可能性を持っています。

しかし、この記事で取り上げたような注意点を見過ごすと、逆にリスクが高まり、誤った判断が導かれてしまうこともあります。組織やチームが持続的に成長し続けるためには、決定プロセスにおいてオープンなマインドセットを持ち、変化に対応できる柔軟性を持つことが大切です。

そして、意志決定を下した後も、実施段階でのフィードバックを大切にし、常に改善を続ける姿勢が求められるのです。

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