リーダーシップ

心の知能指数EQとリーダーシップの関係

はじめに

知能指数はIQ(Intelligence Quotient)と呼ばれて広く知られています。では、IQが高いと優れたリーダーになることができるのでしょうか。

なお、EI(Emotional Inteligence)は情動知能や感情的知性、心の知能指数などと言われており、日本ではEQ(Emotional Intelligence Quotient)とも言われています。本記事では、EQを用いて解説します。

優れたリーダーの条件を研究した複数の研究から驚く結果が出ています。これまでの常識と考えられていた知能指数IQではなく、優れたリーダーに共通する能力は、心の知能指数EQであることが判明したのです。

特に人との関わりが多い職務ではEQを考慮する必要があるのです。そして、EQは、経験や行動を通じて、いつからでも、誰でも伸ばすことができる重要な能力なのです。

本記事では、EQとリーダーシップの関係を示す5つの要素となる能力について、ハーバード大学で教鞭も取られたこともある、ダニエル・ゴールドマン氏の「EQ こころの知能指数(講談社)」を参考にしながら解説していきます。

➊自分自身の感情を認識する能力
➋感情をコントロールする能力
➌自分を動機づける能力
➍他人の感情や欲求を認識する能力
➎人間関係をうまく対処する能力

心の知能指数(EQ)と知能指数(IQ)

IQと生活水準の間には、大きなグループで見ると相関関係があります。IQの非常に低い人の多くはあまりよい仕事につけず、IQの高い人の多くは高給取りになっているという事実があります。でも、実際のところ、例外なくそうなる訳ではありません。

人生での成功度とIQとの相関関係には、例外の方が多いくらいの例外があります。人生を成功に導く要因のうち、IQが関係するのは20%も満たないと考えられています。つまり、80%はIQでは決まらないとも言えます。ある人が社会でどのような地位に就くかどうかは、社会階級から運・不運にいたるまで、IQとは無関係なもろもろの要因で決まってしまうものでもあるのです。

そのもろもろの要因を生かせるかどうかが、実は心の知能指数EQに関わってくるのです。

心の知能指数EQとは、自分自身を動機づけることができ、挫折してもしぶとく頑張ることができる能力です。衝動をコントロールし、快楽を我慢できる能力のことです。自分の気分をうまくととのえ、感情の乱れに思考力を阻害されない能力のことです。

過去に百年近くに渡って多数の学者が研究してきた知能指数IQとは異なり、EQは新しい研究でありコンセプトになります。人生を生きているあいだに生じてくる個人差のうち、EQに起因するものがどれくらいあるのか、はっきりとした数字はまだわかりません。

しかし、現在ある研究データから推測するかぎり、EQはIQと同等またはそれ以上の影響力を持っている可能性があります。IQは、経験や教育の力で大きく変えることは難しいという説がある一方で、EQは、重要な部分は(できれば子供のうちに)教えれば向上させることが可能なのです。

心の知能指数EQとリーダーシップの関係を示す5つの要素となる能力

自分自身の感情を認識する能力

リーダーシップで重要なことは、自分自身の感情をコントロールできることです。
もし、リーダーが感情的になったり、イライラしたり、不機嫌になったり、ストレスが爆発してしまうようなことが頻繁にあると、メンバーはリーダーの感情の波に振り回されてしまいます。メンバーがそのような心理的安全性が低い環境におかれていれば、チーム力を発揮することはできません。

EQが高い人は、自分自身の感情を認識する能力に長けています。
自分自身が何を感じているのかを客観的に認識するということは、感情の波に押し流されないための第一歩になります。

感情をコントロールする能力

リーダーが、自分自身の感情を認識できるようになることは、EQを高めるための第一歩です。
その上で、次に大切なことは、感情をコントロールできることになります。

リーダーがメンバーや上司、顧客などに対してストレスをためてしまい、それが不機嫌な態度になったり、爆発してしまうような現場を見たことがある人も多いかもしれません。
そして、ストレスをためたイライラしたリーダーがいる職場において、生産性が高まることはまずありません。

EQが高い人は、自らの感情を上手にコントロールすることができ、不快な気分に支配されることなく、冷静な判断や対応をすることができるのです。そのようなEQの高いリーダーがいる組織は生産性を高めることができるのです。

感情はトレーニングをすれば一定程度コントロールすることができます。
少しの空白時間を作ったり、1日寝かせるから考えるだけでも、大きな効果があるのです。

怒りをコントロールする方法について知りたい方は、こちらのブログ記事を参考にして下さい。

自分を動機づける能力

仕事では、目標を達成するために生産性や効率性を高めることが重要なポイントとなります。
そのためには、自分自身の動機づけを行い、モチベーションを高く保つ必要があります。

立場がリーダーになると、自分自身のモチベーションを高く保つことは当然重要です。でも、それだけでは足りません。
チームの生産性や効率性を高めるためには、更に、メンバーのモチベーションも高く保つ必要があるのです。

EQが高いリーダーは、自分自身やメンバーの動機づけを行うことに長けているので、チームの士気を高め、やりがいのある職場環境を築くことができます。
目標に向かってやるべきことを成し遂げるために、チーム全体のモチベーションを高く維持することができるのです。

人を動かすために重要なことのひとつは、相手に「重要感」を持たせることです。
この「重要感」を持たせることについて詳しく知りたい方はこちらのブログ記事を参考にしてください。

他人の感情や欲求を認識する能力

チームで仕事をする時には、チームメンバーとさまざまな課題に対応していく必要があります。チームで仕事をする中で様々なことが生じます。

まずはメンバー間の関係です。メンバーが、仕事をうまく進められずに悩んでいたり、メンバー間のトラブルが生じたり、プライベートで落ち込んでいたり、ストレスが蓄積していたり、仕事への集中力を高めて生産性を高めることができない時もあります。人間ですから、人によって程度の違いはありますが、誰しも感情の起伏はあるものです。

次に顧客との関係です。顧客にも様々な人がいるので、その関係がうまくいっていない時は、顧客が不満を感じて不機嫌になったり、ストレスが蓄積してしまう可能性があります。そして、その対応をしているメンバーも同じです。

リーダーはこのような変化を察知できるようにアンテナを高く張っておく必要があります。
変化に気づいた時には、直接メンバーの話を聞きいて感情を認識し、必要な対応方法を考えていく必要があります。例えば、集中しやすい仕事に取り組めるように工程や優先順位を調整したり、トラブルが生じたメンバー間の距離を一時的に離したりすることができます。
これにより、相手の感情や欲求を認識して、対応するための方法がいくつもあるのです。

EQが高い人は、メンバーや顧客に対して高いアンテナを張り、変化に対して相手の感情や欲求を認識し、適切な対応をしていく能力が高いのです。
そのような日々のやり取りを通じて、良好な人間関係を築くための基盤を作ることができるのです。

人間関係をうまく対処する能力

チームで仕事をしていると、人間関係に起因する多くのトラブルが生じるものです。
事実、仕事に関してストレスを感じている人は全体の約70~80%もあり、その要因の1位が「職場の人間関係」なのです。次いで「仕事の量」、「地位・待遇」となっています。

このような厳しい状況の中においても、EQが高い人は、他者との協調や調和を保つ能力を持っているのです。人間関係において相手の感情や欲求を認識した上で、柔軟かつ効果的なコミュニケーションを展開し、チームの調和を保つことができるのです。

おわりに

本記事では、EQとリーダーシップの関係を示す、以下の5つの要素となる能力について、ダニエル・ゴールドマン氏の「EQ こころの知能指数(講談社)」を参考にしながら解説してしてきました。

➊自分自身の感情を認識する能力
➋感情をコントロールする能力
➌自分を動機づける能力
➍他人の感情や欲求を認識する能力
➎人間関係をうまく対処する能力

これらの能力を身につけることで、リーダーとしての可能性が広がります。
EQを高める努力は、個人の成長だけに限らず、チーム全体の発展にも貢献できるのです。

1人1人がEQを意識して取り組んでいけば、きっとよいチームを築くことができるのです。

心の知能指数EQについてもっと知りたい方はこちらの書籍を是非読んでみてください。

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