1. はじめに
仕事のコミュニケーションにおいて、伝え方は非常に重要です。伝え方次第で、相手の「ノー」を「イエス」に変えることができるのです。しかし、実際には多くの人がうまく伝えられず、仕事の成果に悪影響を及ぼしているのが現実です。この記事では、相手の「ノー」を「イエス」に変えるための切り口について解説します。その際に、佐々木圭一氏の著書「伝え方が9割」(ダイヤモンド社)を参考にしながら、効果的な伝え方の技術をご紹介します。
2. 仕事ができない人の特徴!「伝え方」の技術が重要な理由
なぜ、仕事ができる人とできない人がいるのでしょうか?その理由の一つが、伝え方の技術にあると言えます。仕事ができない人は、自分の意図や思考を相手にうまく伝えられず、コミュニケーションの齟齬が生じることがあります。これにより、プロジェクトの進行が滞り、成果物の品質が低下する可能性があります。
一方、伝え方の技術を磨いている人は、自分の考えや要望を相手に明確に伝えることができます。彼らは相手の理解を促し、共感を生むコミュニケーションを構築することで、仕事の効率性や品質の向上につなげることができるのです。
伝え方の技術を向上させるためには、相手の心を動かすアプローチが必要です。次の章では、相手の「ノー」を「イエス」に変えるための具体的な切り口を紹介します。
3. 相手の「ノー」を「イエス」に変えるための7つの切り口
伝え方の技術を向上させるためには、相手の心を動かすアプローチが必要です。ここでは、相手の「ノー」を「イエス」に変えるための具体的な切り口を紹介します。
(1)相手の好きなことから話す
相手に何か動いて欲しい場合、単刀直入に自分の要求を伝えるのではなく、「相手の好きなこと」に焦点を当てることで、相手にメリットを感じさせることが重要です。このようなアプローチを取ることで、「イエス」をもらえる可能性が飛躍的に高まるのです。
例えば、飲食店でサービスを受ける場面を考えてみましょう。店員から次のように言われたとします。
「4分ほどお待ちいただけますか?」
これには、自分自身のメリットしかありません。しかし、次のように言われた場合はどうでしょう。
「できたてをご用意します。4分ほどお待ちいただけますか?」
こちらの方が遥かに魅力的に感じませんか?できたては美味しいですし、何か特別なものを提供してもらえると思えますよね。しかし、実際に考えてみると、注文した料理ができるまでには時間がかかるのは当然のことですし、待っただけでできたてではない料理を提供されることはありません。しかし、相手の好みやメリットにフォーカスして話を進めると、結果が変わることがあるのです。
このようなアプローチは、仕事の場でも有効です。相手に何か協力や支援をお願いしたい場合には、その相手が興味を持つトピックや関心事について話題を提供することから始めるのです。相手が関心を持つ話題に対しては、自分の要求や提案を絡めることで、相手が受け入れやすい状態を作り出すことができます。
例えば、プレゼンテーションを行う際には、相手が興味を持ちそうな事例やデータを用意して話を展開しましょう。相手が関心を持つポイントに絞った情報を提供することで、相手は自分自身のメリットや利益を感じることができます。そして、相手が自発的に「イエス」を言ってくれる可能性が高まるのです。
伝え方の鍵は、相手の立場や関心事を理解し、それに基づいて話を進めることです。相手の好きなことにフォーカスすることで、相手にとって意味のある提案や要求があることを示唆することができます。しかし、この方法を成功させるためには、相手の好みや関心を知る必要があります。そのためには、相手とのコミュニケーションを大切にし、関心やニーズについて話を聞くことが重要です。
また、相手の好みや関心に合わせた提案や要求をする際には、誠実さと説得力も欠かせません。相手に対して信頼を築くためには、自分自身が情報に精通していることや、相手の利益やメリットを最大限に考慮した提案を行うことが必要です。
さらに、相手の好きなことから話を展開するだけでなく、具体的なエビデンスや事例を交えることも効果的です。相手が自分の意見や要求を受け入れやすくするためには、理論的な根拠や実際の成功例を示すことが重要です。これにより、相手はあなたの主張や要求が現実的で信頼性があると感じることができます。
要約すると、「相手の好きなことから話す」とは、相手の興味や関心事に合わせて提案や要求をすることを意味します。相手にとってメリットのあるアプローチを取ることで、相手の「ノー」を「イエス」に変える可能性を高めることができます。ただし、相手の好みや関心を理解し、誠実さと説得力を持った提案を行うことが重要です。さらに、具体的なエビデンスや事例を交えることで、相手の受容性を高めることができます。
(2)嫌いなことを回避できることを伝える
相手の嫌いなことを回避できるという切り口を使うことも、相手の「ノー」を「イエス」に変える効果的な方法です。このアプローチは、相手が抱える嫌悪感や不快感を軽減することで、相手にとってのメリットを提供することができます。言い換えれば、相手が嫌いなことを回避できることを伝えることで、相手の意欲を引き出し、協力や支援を得やすくなるのです。
例えば、芝生を管理している立場である場合を考えてみましょう。
通常、「芝生に入らないで」と言われると、相手にはあなた自身のメリットしか伝わりません。しかし、「芝生に入ると、農薬の臭いがつきます」と伝えると、相手はどのように反応するでしょうか?相手の嫌悪感や不快感を伝えることにより、相手は自然と芝生への入りたいという意欲を抑えるようになるでしょう。
つまり、相手の嫌いなことを回避するための言葉を使うことで、あなたの要求が相手にとってのメリットに変わるのです。
単に「芝生に入らないで」と言われるだけでは、人はついつい芝生に入ってしまうものです。しかし、ストレートに要望を伝えるのではなく、相手が嫌悪感を抱くような言葉を選んで伝えることで、相手は自然とその行動を避けるようになります。
この切り口の鍵は、相手の嫌悪感や不快感に対して敏感になり、それを伝える言葉を作り出すことです。相手が何を嫌うのかを理解し、その要素を避けることで、相手は協力的になりやすくなります。
「嫌いなことを回避できることを伝える」とは、相手の嫌悪感や不快感を回避することに焦点を当て、そのメリットを相手に伝える方法です。相手が嫌悪する要素を伝えることで、相手は自然とその行動を避けるようになります。
(3)選択の自由を与える
「相手のノーをイエスに変える」ための切り口の一つとして、選択の自由を与える方法があります。このアプローチは、相手が自身の意思で選択できるようにすることで、相手の積極的な参加を促し、協力を得やすくなります。選択の自由があること自体が、相手にとってのメリットとなるのです。
具体的な手法としては、相手が好むことを2つ以上挙げることで、相手が前向きに選択できる状況を作ります。人は「決断」を下すことに苦手意識を持ちますが、選択肢を比較することには得意な傾向があります。相手に2つの選択肢を提示し、「A案とB案があり、それぞれメリットやデメリットがありますが、どちらの案が良いですか?」と問いかけることで、相手は決断しやすくなるのです。
例えば、仕事の場面で社内の上司や顧客に対してプレゼンを行う際に、「この案はどうですか?」と一つの決断を迫るよりも、「A案とB案があり、それぞれメリットやデメリットがありますが、どちらの案が良いですか?」と伝える方が相手は決めやすくなります。人は選びたいという本能を持っており、A案とB案を比較することで、自分にとって最適な選択をすることができます。相手が「B案の方がよい」と選択すると、それは単に比較しただけであり、頭の中では決断したと錯覚しやすいのです。
この方法を活用することで、あなたが望む結果である契約や合意を得ることができます。重要なのは、A案でもB案でもどちらでも構わないことを理解し、相手に選択肢を与えることです。相手が自由に選択することで、相手の意思を尊重し、より円滑に進展させることができます。
(4)認められたい欲を満たす
相手の承認欲求を満たすことは、相手の意見や協力を得る上で重要な要素です。人は本能的に認められたいという欲求を持っており、この欲求をうまく利用することで、協力意欲を高めることができます。認められたい欲求を満たすための具体的な手法を以下に紹介します。
認められたい欲求とは、相手の頭の中に「他人に認められたい」とか「いい顔を見せたい」という気持ちがあるときに効果を発揮する技術です。人は誰しも、承認欲求の本能を持っています。この本能は人間のDNAに組み込まれており、認められたいという欲求を満たすために、たとえちょっと面倒なことでも取り組むのです。年齢や性別に関係なく、特にちょっと面倒なことをお願いする場合には、この欲求を刺激することが重要です。
例えば、残業を頼む際にはどのようにお願いすれば相手が快く引き受けてくれるのでしょうか。単に「残業をお願いできますか?」と頼むだけでは、自身のメリットしか伝えられません。しかし、「あなたの企画書がとても優れていて、このブラッシュアップを協力してもらえますか?」と相手を認める言葉から始めると、面倒なことでも協力しようとする気持ちが生まれます。相手の能力や成果を認めることで、承認欲求を満たし、協力意欲を引き出すことができるのです。
頼みごとは相手にとって面倒なことです。上司と部下の関係であれば、仕事として動いてくれるかもしれませんが、認められたい欲求を利用することで、相手の気の乗り方が変わります。相手が自身の意見や能力が認められることを感じると、最終的に、できる成果のクオリティも非常に高いものになることが期待できます。認められたい欲求を満たすことで相手のモチベーションや情熱が高まり、協力する意欲も強くなります。
(5)あなた限定で誘う
誘い方において、「あなた限定」というアプローチは、相手が「寂しがりや」や「自分が好き」という時に効果を発揮します。この技術は、相手の心に特別感を与え、協力や参加を促す手法です。以下に、具体的な方法とその効果についてご紹介します。
①「あなた限定」という特別な言葉を使う
相手に対して特別感を与えるためには、「あなた限定」という言葉を使いましょう。この言葉は、自分が他の誰よりも相手を大切に思っているというメッセージを伝える効果があります。例えば、仕事の会議や研修に誘う場合、「この会議(研修)に来てください」と伝えるよりも、「他の人が来なくても、〇〇さん(あなた)だけにはこの会議(研修)来てほしいのです」と伝えると効果的です。相手の名前を使い、特別感と必要性を強調することで、相手の心を満たし、参加意欲を高めることができます。
②相手が必要とされていると感じさせる
「あなた限定」というフレーズは、相手が必要とされているというメッセージを伝える重要な要素です。相手に対して、自分がその人を特別に必要と思っているという印象を与えることで、相手の承認欲求や自尊心を満たすことができます。自分の存在が重要であると感じる相手は、喜んで協力し、参加する意欲も高まるでしょう。
③特別な体験やメリットを提供する
「あなた限定」という特別な誘いには、相手に与える特典やメリットが必要です。特別なイベントへの招待や限定的な情報の提供など、他の人には得られない特典を用意することで、相手に特別感を与えることができます。相手がそのメリットを享受することで、自身の誘いに対する関心や興味が高まり、積極的な参加を促すことができるでしす。
④特別な関係性を築く
「あなた限定」の誘いは、相手との特別な関係性の構築にも役立ちます。相手が自分に対して特別な存在であると感じるようなコミュニケーションや関心を持つことが重要です。相手の興味や関心に合わせた話題や情報を提供し、相手との関係を深めていきましょう。このような関係性が築ければ、相手はあなたの誘いに対してより積極的に応じてくれることでしょう。
⑤注意点としての良心の持ち方
「あなた限定」の誘い方は、相手に特別感を与える効果的な手法ですが、その際には良心を持って使うことが大切です。相手を利用するためではなく、相手の心を満たし、関係性を深めることを目的としましょう。相手が特別であると感じる理由やメリットを考え、真摯な気持ちで接することが重要です。
「あなた限定」の誘い方は、相手が特別感や必要性を感じることで協力や参加意欲が高まる効果があります。相手が寂しがりや自己愛的な要素を持っている場合に特に効果的です。相手の心を満たし、関係性を深めるために、特別感を伝える言葉や特典の提供、特別な関心やコミュニケーションを大切にしましょう。しかし、この手法を使用する際には良心を持って接することが重要です。お互いの関係をより良いものにするために、相手のニーズや感情を考慮しながら誘い方を工夫しましょう。
(6)チームワーク化する
人々が「面倒くさい」と感じたり、やる必要性をあまり感じない場合に効果を発揮するのが、「チームワーク化」の手法です。お願いを相手任せにするのではなく、あなたと相手をチームとして協力する姿勢を持ちましょう。人は単独行動よりも集団行動やチーム活動に参加することに意欲を抱きます。この特性を活かして、相手がやる気を引き出し、協力する意欲を高めることができます。
人は本来、コミュニティを重視し、共同行動をとる傾向があります。誰かが何かをやる姿を見たり、仲間が協力する姿を presencると、自分自身も同じように行動したくなるものです。この傾向は、特に日本人に強く見られることでしょう。
例えば、仕事上で新しいスキルを学ぶことを嫌がる人に対して、どのように説得すれば良いでしょうか。
「勉強しなさい」と言うだけでは相手にはあまりメリットを感じさせられません。しかし、「一緒に勉強しましょう」と伝えると、面倒くさいことややる気が湧かないことでも、人と一緒に行動することで動く意欲が生まれます。これが「チームワーク化」を活用したお願いの方法です。ただし、重要なのは、あなた自身も行動することです。一緒に行動するとは、同じ場にいて、議論しながらでも、真剣に自分自身がやりたいことに取り組むことです。大切なのは、一緒に行動する場にいることです。
チームワーク化の手法を使えば、相手が面倒くささややる気の欠如を感じていたとしても、協力や参加意欲を引き出すことができます。人は集団の一員として参加することで、目的や意義を感じ、行動する意欲が高まります。相手が一緒に行動するメリットや意義を伝え、チームとしての協力関係を構築しましょう。ただし、チームワーク化の手法を使う際には、自身もその場に参加し、貢献する姿勢が重要です。他のメンバーと共に目標に向かって努力することで、相手も自ら行動する意欲を高めるでしょう。
(7)感謝の言葉を伝える
感謝の言葉を伝えることは、最終手段かつ最大の効果が得られる方法です。これは人との接触において基本的なスキルとも言えます。相手に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えると、相手が拒否することは難しくなります。
感謝の言葉は、相手に対して自身の感謝の気持ちを表す手段です。それは相手に対する尊重や価値の認識を示すことでもあります。感謝の言葉を伝えることで、相手は自身の行動や努力が認められたと感じ、喜びや充実感を得ることができます。
感謝の言葉は、対話やコミュニケーションの中で簡単に使うことができます。例えば、仕事上での協力や支援に対して「ありがとう」と言葉をかけることで、相手は自身の貢献が認められたと感じ、今後も積極的に協力する意欲を高めるでしょう。
4. 「お願い」は相手との共作である
お願いをする際には、自分の思い通りになるかどうかは運に左右されるだけでなく、相手のことを想像し言葉を選ぶことが重要です。相手の視点を考え、共感を生む言葉を使うことで、お願いが受け入れられる可能性がぐっと高まります。お願いの技術を身につけることで、相手にとってもメリットがあり、本能的に受け入れたいと思う内容になるのです。お願いを「ノー」から「イエス」へと変える鍵は、自分自身ではなく、相手の中にあるのです。お願いは、あなた自身の言葉ではなく、あなたと相手の共作なのです。お互いの幸福を共に築くことが重要です。
この技術を実践することは、あなたの未来を変える可能性を秘めています。しかし、この技術は簡単に成功するためのものではありません。思った通りにうまくいかない瞬間もあるでしょう。なぜなら、これは相手のことを想像する技術であり、言い換えれば相手のことを好きになり(興味や関心を持ち)、愛情を表現する(お互いのメリットを最適化する)ための技術だからです。
相手の視点やニーズを理解し、相手がどのようなメリットを求めているのかを考えることが重要です。お願いをする際には、相手にとってもメリットがあることを伝え、相手が受け入れる動機を喚起する言葉を選びましょう。また、相手とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、お互いのハッピーを追求することが大切です。
5. まとめ
これまで、仕事のコミュニケーションにおいて伝え方の重要性について解説してきました。「伝え方」の技術を磨くことで、相手の「ノー」を「イエス」に変えることができる可能性が高まります。
仕事ができない人とできる人の違いは、伝え方の技術にあります。伝え方が上手い人は自分の考えや要望を明確に伝え、相手の理解と共感を促し、仕事の効率性や品質の向上につなげることができます。
相手の「ノー」を「イエス」に変えるための具体的な切り口は以下の通りです。
- 相手の好きなことから話す
- 嫌いなことを回避できることを伝える
- 選択の自由を与える
- 認められたい欲を満たす
- あなた限定で誘う
- チームワークを促す
- 感謝の言葉を伝える
また、お願いをする際には相手の視点を考慮し、共感を生む言葉を選ぶことが重要であり、相手にとってもメリットがあることを伝えることで受け入れられる可能性が高まります。お願いは、双方の共作であり、お互いの幸福を共に築くことが重要です。
この技術は、自分自身の未来を変える可能性を秘めており、相手のことを好きになり(興味や関心を持ち)、愛情を表現する(お互いのメリットを最適化する)ために活用することが効果的です。
6. おすすめ書籍「伝え方が9割(ダイヤモンド社)」
本記事の内容を更に学び深めるために、佐々木圭一氏の「伝え方が9割(ダイヤモンド社)」をご紹介します。
この書籍は、効果的なコミュニケーションスキルを身につけるための実践的なテクニックやアプローチを提供しています。お願いを含むコミュニケーションにおいて、相手との信頼関係を築きながら意思疎通を図る方法について詳しく解説されています。
「伝え方が9割」では、相手の心理や感情にアプローチするためのテクニックや、具体的な事例を通じて実践的な指南がなされています。自分自身のコミュニケーションスキルを高めたい方や、お願いの効果を最大限に引き出したい方にとって、有益な情報源となることです。
この書籍では、お願いを含むコミュニケーションにおいて、相手の心理や感情にアプローチするための具体的なテクニックが紹介されています。例えば、相手の視点を理解し、相手が求めるメリットや利益に焦点を当てる方法や、共感を生む言葉を使って相手との共感を深める方法などが解説されています。